巧の部屋 ながやす巧の漫画術

前回は『壬生義士伝』連載前の膨大な準備作業、2年以上を費やした取材旅行や資料集め、設定資料作成について扱いました。今回は、いよいよ漫画本編執筆開始にあたり、先生が始めた作業についてお話します。 …以下こういう作業を、普通の漫画家さんは行いませんけど…。

第3回
写経と字コンテ

前回は『壬生義士伝』連載前の膨大な準備作業、2年以上を費やした取材旅行や資料集め、設定資料作成について扱いました。今回は、いよいよ漫画本編執筆開始にあたり、先生が始めた作業についてお話します。
…こういう作業を、普通の漫画家さんは行いませんけど…。
浅田次郎先生の原作小説『壬生義士伝』を漫画化するにあたって、ながやす先生は資料集めと取材旅行と並行して「写経」を行いました。
…まあ「写経」というのはちょっとした例えなのですけど、要は『壬生義士伝』小説(上下巻)を、丸々書き下したということ。
「書写するのは、実は最良の読書法」などと言われます。漫画化するために、小説そのものを書き写してじっくり吟味するという「手はかかるけれど、一番役に立つ」方法を、ながやす先生は選んだということです。

字コンテ

次にながやす先生が行ったのが「字コンテ」作業。
字コンテというのは、漫画執筆ではあまり一般的な言葉ではないけど、要するにネームの前段階、つまりセリフの入ったフキダシと、人物のアタリも背景も入っていない(その代わり、文字でコマの状況などを書き出してある)コンテです。
まずこれを最初の一章分作成し(分量的にはおよそ500ページを超えます!)、赤字でいろいろ修正しながら、章全体のバランスを確かめます。基本的に各章で必ず最初にこの字コンテを作成し、それからいよいよ本番の絵コンテ、つまり一般に言われる「ネーム作業」へと移行するわけです。

次回は、絵コンテから下描きで、何度も繰り返し修正する「ながやす巧流」のコダワリを詳しく解説しましょう。

次回
【下描きノート8冊分】に続く
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