壬生用語辞典

第5章 1話

二分金
二分金
(にぶきん)

吉村貫一郎が南部藩大坂藩邸で切腹を命じられた折、懐から出てきた巾着袋に入っていたのが合計十枚もの「二分金」です。 もちろんこれは江戸時代に流通していた貨幣ですが、実は「二分」というのは小判の「二分の一」という意味です(20%ではありません)。 さて、現在の価値に換算すると…これが結構面倒くさいのです。当時の物価はモノによってバラバラで、単純に現代と比較できません。しかも江戸時代初期と後期、さらに幕末(この時期、超インフレが襲ってきました)ではかなり異なりますから。 一応、当時発行されていた万延小判を基準に、単純に2で割ると…高く見積もって1両1万円、二分金一枚で五千円程度。 なので、10枚で合計五万円(万延小判に換算して5両)、といったところでしょうか。吉村が呟いていた通り、自分の死後の後始末(棺桶代に人足代まで加えても)には十分だったでしょう。

→初出 第5章1話 p026

報恩寺
報恩寺
(ほうおんじ)

切腹を前に、吉村貫一郎が幻覚の中で(?)迷い込んだのが、故郷南部・北山(現在の岩手県盛岡市名須川町)の報恩寺です。 曹洞宗の古刹で、荘厳な山門や五百羅漢堂などで有名です(この五百羅漢堂に鎮座している「羅漢様」については、別項で説明します)。 ちなみにこの吉村切腹の翌年(明治二年・1869年)6月、戊辰戦争敗戦の責任(ことに奥羽列藩同盟から離脱した久保田藩を攻撃したことへの責め)を取り、盛岡藩家老の楢山佐渡はこの寺の本堂で斬首されました。

→初出 第5章1話 p031

羅漢様
羅漢様
(らかんさま)

「羅漢(阿羅漢の略)」は、主に禅宗(曹洞宗を含む)の寺院などに鎮座された仏像(十六羅漢、五百羅漢などで表されることが多い)です。 如来や菩薩などの「仏」と違い、あくまで羅漢は「悟りを開いた仏道修行者」つまり最高の境地に達し、衆生から尊敬と崇拝を受ける「人間」です。 剃髪し、袈裟を纏った姿で表現されることが多いようです。

→初出 第5章1話 p034

岩手山・姫神山
岩手山・姫神山
(いわてさん・ひめかみさん)

岩手山は盛岡市北西部に位置する、岩手県の最高峰(標高2083m)の成層火山で、その姿から「南部富士」の異名をとる山です。これと対をなすのが姫神山(標高1123m)で、盛岡市の東に位置しています。この二つの山はちょうど、盛岡市と奥州街道(現在の国道4号線)を挟んで東西にそびえる名山として有名で、二つの山は夫婦であったという伝承があります(ちなみに夫の岩手山は北上山地にそびえる早池峰山に心変わりしてしまい、それを知った姫神山は嫉妬して…などといった、あまり麗しくない伝承もありますが)。

→初出 第5章1話 p038

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