壬生用語辞典

第10回
(単行本第2巻)P053〜P076

髪型
髪型
(かみがた)

今回(第10話)の冒頭で、沖田総司くんが発した最初のセリフ「その髪型は変装ですか?」について、改めて少々解説しておきましょう。まあ、時代劇ファンには常識なのでしょうけど、読み飛ばし(見飛ばし?)てしまう読者がいるかもしれないので、念のため、ということで。
今回、新選組を脱走して捕まった酒井兵庫に関していえば…上(脱走した時点)と下(新選組隊士だった時点)のコマを比べると一目瞭然なのだけど…髷の形が微妙に変わっていますね。つまり当時の常識として、士農工商身分の違いで、髪型も微妙に違うのです。だから沖田くんは「町人に変装して、潜入捜査をしてるんですか? 隊を抜け出して勝手に?」と、皮肉を込めて酒井兵庫に声をかけたというわけです。
同じ江戸時代でも前期、中期、後期と年代が進むにつれて細かく分類できるし、もちろん男性以上に女性の髪形(島田髷など)はさらに細かく変化してるので、解説するとキリがないのですが、この時代髷は俗にいう「銀杏髷(いちょうまげ)」が流行していました。
頭のてっぺんを剃りあげる「月代(さかやき)」は同じでも、武士のソレは横髪の鬢(びん)も襟足の髱(ほう)もぴたっとまとまっているのに対して、町人は鬢も髱もふっくらしています。 さらにいうと、商人と職人など職業によっても…たとえば商人の髷は小さく、職人のは反り上がってる…などなど、バラエティ豊かでした。
もちろん、この「身分や職業によって髷が異なる」風潮は、お上が法度で定めたものではなく、庶民たちが自発的に行ったものです。お陰で髪結いはいつも大忙し。江戸時代の髪型のトレンドは現代同様、さまざまに変化していたんですね。もっともこれより少し後、お上が明治新政府に代わると、いきなり髷はバッサリ切れ! という無粋な「断髪令」が出されたりしますけど。

→初出 第2巻p053

戻る TOP