壬生用語辞典

第六章 第4話

火桶
火桶
(ひおけ)

灰を敷いた桶の中で炭を燃焼させる暖房器具…などと説明しなければいけないほど、現代ではほとんど骨董品と化してしまった「火桶」…火鉢と呼んだ方が一般的ですが、もちろん明治の文明開化以前には、我が国の暖房器具として大活躍していました。その起源は相当古く奈良時代あたりからで、平安期の有名な随筆「枕草子」の記述にも登場します。
大型の陶器製や金属製もありますが、本編で描かれたのは木製の小型携帯用(移動式)のもので、俗に「手あぶり」などとも呼ばれました。
薪を使う囲炉裏などと違い、炭は煙も出さず(そのかわり長時間使用すると一酸化炭素中毒になる危険はありますが)上品だということで、公家や武家屋敷で特に重宝されたそうです。しかし改めて考えてみると雪降る厳冬に、広い南部藩蔵屋敷に置かれていた暖房器具はこの火桶だけ、というのも凄い話ですね…。

→初出 第六章 第4話 p005

凍れ雪
凍れ雪
(しばれゆき・すばれゆき)

「しばれゆき」と表記するのが一般的ですが、吉村貫一郎は東北南部人らしく「すばれゆき」と発音しています。
我が国には雪に関する名詞が豊富で、各地で独特の表現が見られます。この「凍れ雪」は非常に低温のさらさらとした雪のこと。雪質からアスピリンスノー、細雪(ささめゆき)、粉雪などともいわれます。息を吹きかけると飛んでしまうような状態で、この逆が「ぼた雪」「ベタ雪」といった湿気を含んだ雪質。さらに気温が上がった状態だと雨交じりの「霙(みぞれ)」となります。
ちなみに「凍れる(しばれる)」というのは東北・北海道でよく使われる方言ですね。

→初出 第六章 第4話 p011

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