壬生用語辞典

最終章 第1話

薩摩の黒田
薩摩の黒田
(さつまのくろだ)

本編中に詳しい身元は特定されていませんが、この箱館戦争最後の戦場(千代ヶ岡の戦い)に斃(たお)れた吉村嘉一郎の最期を看取ったこの人物は、薩摩藩士にして箱館戦争で官軍の大将を務めた黒田清隆です。
この人物に関しては本編(第12巻104ページ)において、嘉一郎と同じく箱館戦争に参戦した居酒屋・角屋の親父(元新選組隊士・竹中正助)が語っていますが、こののち彼は北海道開拓使長官なども歴任し、明治憲法発布後には第二代内閣総理大臣にもなりました(帝国陸軍軍人としての階級は陸軍中将)。

→初出 最終章 第1話(p09)

護国の鬼
護国の鬼
(ごこくのおに)

何やら恐ろしげな響きの言葉ですが、これは古来より軍人(武士)が「国を守るために命を落としたのち」その魂魄(こんぱく)が護り神としてこの世に留まる、といった思想を体現した慣用句です。なので「悪鬼となってこの世にタタリを為す」といった意味では決してありません。

→初出 最終章 第1話(p10)

千代ヶ岡の御台場
千代ヶ岡の御台場
(ちよがおかのおだいば)

吉村嘉一郎が散華(さんげ)し、「旧幕府軍は箱館総攻撃のとき、最後まで降参せず玉砕した」と、のちに語られた戦場です(第七章では千代ヶ岡陣屋、という名称でも登場します)。ちなみにこの箱館戦争で、官軍に抵抗した旧幕府軍の拠点は、五稜郭のほかに箱館山(現函館山)の北端に設置した弁天台場、そして五稜郭の北に権現台場、西南に設置したこの千代ヶ岡陣屋(台場)がありました。ただ、この千代ヶ岡の台場は箱館湾に面して五稜郭の前衛を守る砦の役割があったのですが、嘉一郎と共に参戦した居酒屋・角屋の親父(元新選組隊士・竹中正助)に言わせれば「いざ砲戦になりゃあ何の役にも立たねぇ」ただの土塁を板塀で囲っただけの陣地だったそうです。

→初出 最終章 第1話(p13)

戻る TOP