巧の部屋 ながやす巧の漫画術

第1回
アシスタント不在で
480ページ「一気通貫」

連載漫画は通常だと──週刊や隔週、月刊連載でも同じなのですが──だいたい10数ページから数10ページの単位で、ネーム(セリフ入りのラフ)をまず起こし、それから編集担当さんのチエックを経てから下描き、ペン入れ、それから仕上げ…と進んで行き、セリフの写植を貼って原稿完成、というのがプロセスです。
また、雑誌連載などの場合、背景やトーン、ベタ処理などを含め、一人の作家さんに数人のアシスタントがつくのも常識ですね。
最近ではデジタルで、たとえばペン入れのあと原稿をスキャンしてトーンやベタ、背景処理をしたり、あるいはペン入れせずに直接ソフトを使ってタブレット入力する…なんてハイテクを駆使して省力化する作家さんも増えてきたけど、基本的な作業の流れは変わりません。

ところが『壬生義士伝』の場合は、これとはかなり異なるプロセスで描かれています。名付けて「ながやす巧流漫画術」。ながやす巧流にはさまざまな特徴があるのですが、まずその最たるものが、
「アシスタントを一切使わない」
「章全体を、一気同時に作業する」
という執筆スタイル。
ながやす先生はポリシーとしてデビュー以来、アシスタントを使っていません。
つまりあの細密なペンタッチ、キャラクターから背景に至るまで、実は先生がたった一人でお描きになっているのです。

本編カット

さらに驚くのは、一章およそ480ページのボリュームを、数か月…それどころか、年単位の時間をかけ、まとめて仕上げるという形を取っていること。
当り前の話ですが、ネームも下描きも一気に480ページ分、ペン入れ作業も480ページ分。最終的には完成原稿もドカン! と大ボリュームで仕上がってきます。
実は本サイトの連載は、この一気に上がった膨大なボリュームの原稿を、原則24ページ単位で区切ってアップしているわけなのです。
もちろんドカンと上がるまでには、それなりの時間がかかるのは当然。

では、次回から驚異の(!?)「ながやす巧流」漫画術のあれこれを、詳しく解説していきましょう。

次回
【準備2年、写真3千枚強】に続く
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